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天山の巫女ソニン 感想

天山の巫女ソニン(1) 黄金の燕 (講談社文庫)
著者 : 菅野雪虫
発売日 : 2013-09-13
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「天山の巫女ソニン」という本が面白かったので、その感想です。児童書なのですが、もうめちゃめちゃしっかりした世界と設定で大人が読んでも面白い本です。面白くて、どう感想書けばいいかわからず読んでからしばらく経ってしまいました。さすがに内容を忘れてきているので、感想をブログにしたためておきます。

 

あらすじ
天山という場所に夢見の力をもつ巫女がおり、助けを求めにきた人に対して知恵を授けていました。ソニン(主人公)は夢見の力が強いと見込まれていましたが、成長するにつれて力を制御できないことがわかり、山をおりただ人に戻ることになりました。戻ったあと、なんやかんやで一番落ちこぼれの末の王子の侍女になることになり、王子の手助けをしていく話です。
 
感想
まず、夢見の力というのが限定的な力なのがちょうどいいものでした。未来を見通すのではなく、夢で魂を飛ばしてある場所のことを視る。ただそれだけなのです。でも、それはどういう状態だったのか、何がおこっていたのか、場所はどこなのか。というのを知識でもって判断し伝えるということを巫女は行っているというとこです。
超越した力ではありますが、己の知識がなければただ無意味な力であり、賢くあるための教育と欲を抑えるためのルールが課されているがよかった。
そして、その夢見そのものができないことでただ人に戻るのですが、ソニンは賢かった。そして欲がないソニンがだんだんと人の世の嫉妬や羨望、悪い心を知りつつも、周りの人に恵まれてまっすぐ成長していくのがさっぱりとしてよかったです。
わかりやすく対照的なキャラとしてその知識を濫用したり、ふてくされる人がいたのがそれを顕著に感じるエピソードとしてありました。
はてしない物語と比べてしまって申し訳ないんだけれど、主人公が子供ゆえの傲慢さ愚かさや英雄になったが故の無敵感を得てそれから壁があって、その凝り固まった厚顔無恥な性格が清廉(といわずとも常識的)になっていくという物語が苦手です。大体が読んでて腹立たしく、もっと周りの意見を聞けよと思うので。その点、ソニンでは王子がその役割でしたが、主人公は欲がない子で"くもりなきまなこ"を持ちうる聡い子だったので、好ましい!と思う所以だったかと思います。
 
まあ、色々なんやかんやあってソニンは自分の生きる道を見つけていくのですが、児童書なので主人公が子供なんですよね。子供の成長物語なので恋愛がない。王子からの恋は微妙に波動を感じましたが、ソニンはまだそこまでわかっていない年齢。これが児童書でなければ!!!児童書でなければもしかしたら何かしらこう、あったんでしょうかね?!
児童書ってそういえばそうだよね!そう!恋愛がないよね!そらもうそうだけど!本筋に何ら関係ないけど!ああ〜〜〜見たかった王子とソニンのその後。。という己の欲望は一部満たされないままでした(これで評価が下がるわけではないけど言いたかった!)
 
私が子供の時に読みたかったな〜。世界観もしっかりしていて、魅力的な登場人物ばかりで面白かった。久々に続き読みたいけど読んだら終わっちゃうからもったいない!と思わせてくれた本でした。
表紙は結構大人っぽいのに児童書なんだ?と思ったのはここだけの話。
というか、かなり良質なファンタジー小説なのに、最近になって知りました。実は売れている本なのかもしれませんが、もっと有名になってくれて良いのよ。。そして続編を。。(絶対ないと思いますが)